転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


187 心配するお母さんと、しょんぼりするロルフさん



「忘れ物は無い? お土産はちゃんと持った?」

「うん、大丈夫だよ」

「ルディーンはしっかりしてるから大丈夫だとは思うけど、気を付けていってくるのよ」

 今日の僕は、村のお仕事を休んでイーノックカウに行くことになったんだ。

 と言うのも、この間村に来た行商の人がイーノックカウから村にお手紙を運んできてくれたからなんだ。

 でね、その手紙はバーリマンさんからのもので、そこには魔法陣の教科書が手に入ったから今日、イーノックカウに来て欲しいって書いてあったんだ。

「もう! 僕、イーノックカウに1人で行くのは初めてじゃないんだから、そんなに心配しなくてもいいのに」

「それでも心配なのには変わらないのよ。ルディーンはまだこんなに小さいんだから」

 お母さんはそう言って僕の事をギュッてしたんだ。


 でね、その後もちょっとの間心配そうにしてたんだけど、今日来てねってお手紙に書いてあるから行かないとって言ったらやっと手を離してくれた。

「それじゃあ、行って来るね」

「はい。行ってらっしゃい」

 だから僕はお母さんに行ってきますって手を振ってから、ジャンプの魔法を発動。

 魔法が発動するとさっきまでいた僕のお家とは全然違う、とっても豪華な部屋の中に居たんだ。

 でね、そこにはここに来た時はこれを鳴らして教えてねって言われているハンドベルが置かれてたから、それを僕はカランカランって振ったんだよね。

 コンコンコンコン。

 そしたらすぐにノックの音がしてびっくり。

 この前はこんな時どうしたらいいか解んなかったからオロオロしちゃったけど、今日の僕は違うんだ。

「は〜い!」

 このノックは僕を待っていたメイドさんが、入ってもいいですか? って聞いてるって事だから、僕はちゃんと元気よく返事をしたんだよね。

 ガチャ。

 そしたらこのお家のメイド長さんであるストールさんがドアを開いて……、

「大ルディーン君。やっと来たか」

 さっと横に移動すると、その後ろからロルフさんとバーリマンさんが出て来てびっくりしちゃったんだ。

 だってこの部屋に置いてあったハンドベルを鳴らしたら、すぐにノックの音がしたもん。

 だから僕はメイドさんが部屋の外で待ってたんだろうなぁって思ってたんだけど、まさかそこでロルフさんたちも一緒に待ってたのかなぁ?

 そう思ってロルフさんに聞いてみたら、

「いや、確かにストールは部屋の前で待っておったが、わしらは隣の部屋で寛いでおったぞ。じゃがな、ルディーン君が鳴らしたハンドベルの音はわしらの部屋まで聞こえておったんじゃ。じゃからそのまま部屋を出るとそのタイミングで君がストールのノックに返事をしたから、そのまま入ってきたと言う訳じゃ」

 そっか。部屋の外で待ってた訳じゃないんだね。

 そう言えばこのお部屋って1階だし、バーリマンさんが遊びに来てるのなら近くの部屋にいたって変じゃないもん。僕、間違えちゃった。


 ロルフさんが言うには、今回は魔法陣のお勉強だから錬金術ギルドだとちょっとやりにくいよね。

 ならどこがいいかなぁ? ってなった時に、今いるロルフさんのお家でやったらいいんじゃないかって話になったんだって。

「ここなら魔法陣を書くための道具もそろってますし、参考になる魔道書などもありますから私の館からわざわざ運ぶ手間もありません。それにルディーン君が移動する時間も省けますから、勉強するには一番でしょう」

「うむ。それにギルマスの館で勉強すると言われたら、わしはちとお邪魔しづらいからのぉ。じゃが、ここでやると言うのであれば、わしの館なのじゃからルディーン君が勉強する様を堂々と見守る事ができると言うものじゃて」

 でね、お話をしたら二人にとっても都合がいいから、この凹地でお勉強しましょうって事になったんだってさ。

「ここでお勉強するの? 僕はいいけど、ストールさん。ホントにいい?」

「ええ。旦那様もこう仰ってますし、私どもも特に不都合はありませんわ」

「そっか、ストールさんがいいって言うなら、大丈夫だね!」

 もしロルフさんたちがやっちゃだめな事を言ってたらストールさんが怒るはずだもん。

 でもいいよって言ってるって事は、ホントにここでお勉強してもいいって事だよね。

「はて? ストール、ルディーン君は何故、わしではなくお前の許可を得たのじゃ?」

 そう思って僕が安心してると、ロルフさんが不思議そうにストールさんにこう聞いたんだ。

「それは私がこの館の管理を任されているからでは無いでしょうか? 旦那様は普段、イーノックカウ内の本宅でお過ごしになられておりますし」

「なるほどのぉ」

 そしたらこんな事言ってるんだもん。

「違うよ! ロルフさんがやっちゃダメな事してたらストールさんが怒ってくれるもん。だからちゃんと聞かないといけないんだよ」

「あら、まぁ」

 あっ、勘違いしてる! って思った僕は、ちゃんと教えてあげたんだ。

 そしたら、

「ダメな事をやったらって。ルディーン君からは、わしがそのように見えておるのか……」

 ロルフさんがなんでかしょぼんとしちゃって、それを見たバーリマンさんが一生懸命慰めてたんだ。

 なんで? 僕だってしちゃダメな事したらお母さんに怒られるもん。

 でも、そうやって怒ってくれるから次からは失敗しなくなるんだよってお父さんも言ってたんだよね。

 だからストールさんが怒ってくれるのはとってもいい事だって、僕は思うんだけど。 

「ねぇ、何でロルフさんはしょぼんとしちゃったの?」

 でね、いくら考えても解んなかった僕は、ストールさんになんで? ってきいて見たんだよね。

 そしたら、ロルフさんは僕にだめな人だって思われてるって思ってしょんぼりしちゃったって言うんだ。

「違うよ! ロルフさんはいっつもダメな人なんかじゃないもん。、たまにダメな事をしてストールさんに怒られてるだけだよ」

 だから僕はロルフさんに、ダメな人だって思って無いよって教えてあげたんだ。

「そうか、わしはたまにダメな事をする大人と見られてるのじゃな」

 でもね、何でか僕がそう言ったら、ロルフさんはもっとしょんぼりとしちゃったんだよね。

 僕、ロルフさんはダメなんかじゃないよってちゃんと言ったよね?

 なのにしょんぼりしちゃうなんて、ロルフさんが何考えてるのか、僕にはさっぱり解んないや。


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